Missing, If you want

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Missing, If you want

ソロステージを控えた志希と、レッスンルームに集った飛鳥、夕美、響子、杏の5人。しかし、志希は既に曲を自分のものにしていた。驚く一同を置いて、志希は飛鳥を連れ、失踪してしまう。あてもなくふらつく志希と、その真意が読めない飛鳥。LIVE前夜、志希の往く先には、何が待っているのか…

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レッスンルーム

Shiki

1、2、3、4、5、6、7、8……
そんでもって最後にチャンチャンチャン♪
はい、でーきた。

Yumi

すごい……志希ちゃん、カンペキじゃない……?
いつのまに……。

Anzu

いやー、よかったよかった。
志希ちゃんは振り付けカンペキバッチリ、
ならみんな ! もう休憩にしよう !

Kyoko

……杏ちゃん、まだレッスン始まったばっかりだよ……?

Anzu

だって、主役の志希ちゃんがここまでカンペキだったらさー、
べつに大丈夫じゃなーい?

Yumi

前のイベントのときは、結構苦戦してた気がするのに……すごいね。
どうしてこんなに?

Shiki

そーだねー。
でも夕美ちゃん、前は前、今は今だよー♪ ふふーん♪

Anzu

天才肌っていうか、気分屋なんだよねー。
私も似てるから分かるけど。

Kyoko

どういうこと? 杏ちゃん。

Anzu

気分が乗ってると、なんでもうまくできちゃうんだよね。
集中が続くし、そういうときはなんでも覚えられるし。
けど、気分が乗らないと、なにやってもダメなんだよ。

Yumi

はぁ……。
最後だけ聞くと、勉強をしない学生の言い訳みたいだね。

Asuka

ウッ……なぜだ、心が痛い……。

Kyoko

分かるなぁ。そういう子にかぎってやればできるって言うんだよね。
うちの弟とかも宿題やりたくないときに限って
そういう風に言うもの !

Asuka

……なぜだ?
ボクが責められているわけではないのに、ここにいたくない……。
まぁ、なんだ。端的に言ってダメなヤツなのだな……きっと。

Anzu

だって、そういう風にちょっとデキる子に生まれてさー
ダメな感じに育っちゃったんだもん……。

Shiki
Anzu

仕方なーい !
仕方ないよね !

Yumi

もう、アイドルなんだから、ダメとか言わないの !

Kyoko

うふふ……。
じゃあもう踊らないなら、せっかくだし休憩室に行きましょうか。

Yumi

それで、レッスンは万全として……意気込みは、どう?
やっぱり緊張する?

Kyoko

そうですよね。やっぱり主役ですし。
明日のステージにかける気合いとか、あったら聞かせてほしいです !

Shiki

ないよ !

Anzu

ないんだ……。

Asuka
Yumi

不安じゃないのか?
心配じゃないの?

Shiki

んー。
なになに、キミたち、あたしが感情のない存在だとでも?

Kyoko

いつもの奔放なところを見てたら、
感情がないとは思いませんけど……ねぇ?

Asuka

感情なんてモノに左右されない存在になれるとしたら……
ボクは一番に立候補したいものだ……。

Shiki

キミキミ、感情を無くしたら人間が人間たる理由が失われてしまうよ。
エモーションこそ人間の根源だよ !

Yumi

ど、どういうこと?

Anzu

さぁ……さすがに杏はそこまでぶっ飛んでないんで……
わかんない。

Asuka

フフッ。全く面倒なヤツだ。
この天才め、日本語で喋ってくれ。

Shiki

志希ちゃん、いま、なーんにも考えてなーいでーす。

Yumi

志希ちゃんだって、ステージの前ではドキドキするって、
前言ってなかった?

Kyoko

うん、以前、私たちとのイベントのときだって、そういう話を……。

Shiki

そのときはそうだったんでしょ。今は違う。それだけだよ?

Kyoko

そ、そう……でしたっけ……?
前の志希ちゃんはもっとこう……うーん?

Yumi

志希ちゃんってそんな子だったっけ……?

Shiki

フンフン……響子ちゃん、和食派なんだ。
味噌に醤油、発酵食品の匂い~♪ 夕美ちゃんの指は……緑の匂いで、
杏ちゃんはお菓子の匂いがするね !

Kyoko

えっ? えっと?
た、たしかにそうだけど……分かるものなの?

Yumi

志希ちゃん、あいかわらず匂いに敏感なんだねぇ……。

Shiki

飛鳥ちゃんはー……コーヒーとミルクの匂いかにゃー。

Asuka

おいやめ……はぁ。この警察犬並みの匂いフェチめ。
と……そんな話はまぁいい。
えーと……何の話だったか……緊張していないか、だったか?

Shiki

緊張って生理現象でしょ。呼吸と発汗が活性化して、肉体的活動を
効率よく行うためにするものだもん。人間はみんなするよね、緊張。
でも、緊張する心と緊張しているあたしは別だしー?

Yumi

ん~……つまり、どういうこと?

Asuka

おい天才娘。日本語で喋ってくれ。頼むから。

Shiki

んー。だって、今回の曲はあたしのソロ。あたしのものだよ?
あたしのものは、あたしだけのものにするの。
そうじゃなきゃあたしのものにはならない。そこに緊張は関係ないよ。

Kyoko

よくわからないけど、すごい自信……。
やっぱり志希ちゃんて、普段、ふわふわしてるのに、
すごいんだね……。

Asuka

だが、やっぱり伝わらない。
この天才娘め。

Shiki

ニホンゴ、ワカリマセーン。
キコクシジョだからー。

Anzu

その返し、ずるいなぁー。
杏も偽装留学して、都合悪いことはそれで逃げよっかなぁー。

Yumi

ふふっ。じゃあ、杏ちゃんが逃げちゃう前に
プロデューサーさんを呼んでこよっか。
ダンスの出来映え、見てもらうの。

Anzu

えー、また踊るのー?
志希ちゃんだけならともかく、私たちもー?
うー、めんどいー……。

Kyoko

ふふっ。まぁまぁ。じゃあ、私もいきますよ、夕美さん。
すぐにプロデューサーさんを呼んできますから、待っててくださいね。

Yumi

ただいまー。プロデューサーさん連れてきたよ !

Player nameP

お疲れさま。

Anzu

あー、プロデューサー。お疲れー。

Kyoko

あれ? 杏ちゃんだけ?
志希ちゃんと飛鳥ちゃんは……?
どこか、買い物とか?

Anzu

「志希ちゃんは飽きたので失踪しまーす」
だって。

Yumi

えぇぇ……飛鳥ちゃんは?
もしかして、飛鳥ちゃんも一緒に……?

Anzu

「キミの失踪とやらが本当に失踪なのか、
その真意を探る旅に出るとしようか」
……だって。

Kyoko

杏ちゃん、どうして止めておかなかったのー。
せっかくプロデューサーさんを呼んできたっていうのに、
志希ちゃんがいなかったら……。

Anzu

こっちも必死に食い下がったんだけど……力及ばず……。

Player nameP

ほんとに?

Anzu

いやー、出てくのを見てただけだけど……。
だって仕方ないじゃん?
言っても聞かないし、アレは無理に止めても窓から逃げるよー !

Yumi

プロデューサーさん、どうします?
探すなら、私も探すの手伝いますよ !

Player nameP

放っておこう。

Kyoko

え、いいんですか? 本番は明日ですよ?

Yumi

レッスンの最終確認もしてないのに…… ! ?

Player nameP

志希だから。

Yumi

は、はぁ……。

Anzu

じゃあ、杏もドロンしまーす……。
お先にしつれいー。

Player nameP

ダメ。

Anzu

んあっ ! ? 志希ちゃんは許されて、杏は許されないのか……?
差別だ ! 不当待遇だー ! デモを起こすぞー !

Kyoko

杏ちゃん……。

Yumi

あきらめよっか……。

街中

Asuka

それで……何処へ往くんだ。何処を目指す。
キミの失踪とやらは。

Shiki

んー、どこにもいかないよー。
『どこかに行っちゃった』のが失踪だもん。
『どこかに行く』のは移動か旅じゃない?

Asuka

そんな回答、用意してあるのなら先に言ってくれ。
まったく読めないヤツだよ、キミは。

Shiki

にゃははー。いま考えたー。
どうせこの国の交通とかよく分かんないし、いくとこまでいこー !

Asuka

その先に、何が待つのか……
あるいは、何もないが待っているのか……。

遊園地

Shiki

にゃはー、遊園地だー。
でも、あそこ行くのはきっと今じゃないなー。

Asuka

キミというヤツはわからないな。類い稀な美人のクセに
エキセントリックな匂いフェチでトラブルメーカー。
自由奔放で猫っぽいが頑固、偏執狂のようなところもある。

Asuka

それでキミがボクの歳だったころ、キミは既に海外で大学生だろう?
なんてスペックだ。ギフテッドというヤツは。
何が起きたらそんな生物が生まれるのか、教えてもらいたいな。

Shiki

……でも、14歳のあたしはアイドルじゃなかったし。
どこにでも居るような寂しい女の子だったよ。

Asuka

飛び級して海外の大学に行くような子がどこにでもいたら、
セカイはもうちょっと賢い方向へ進歩しているだろうな。

Shiki

そんなのは、テストのスコアがほんの少し高いかどうかだよ。
それに、踏み出したかどうかの差でしかないし。

Shiki

あたしはあたしが自由でいられるところに……
パパがいるところにいきたかった。そのチャンスがあった。
だからいった。

Shiki

キミはチャンスを待っていた。
プロデューサーが現れた。チャンスを掴んだ。

Asuka

……同じだな。
いや……同じではないが、選ばれて選んだのは同じ、か。

住宅街

Asuka

ど、何処だここは……歩いたり電車に乗ったり
タクシーを捕まえたり。まったく、キミというヤツは、わからん。
他人の目や評価を気にしないんだな。

Shiki

他人があたしのことをどう評価しようとも、
あたしはあたしを愛してあげるしかないもん。
キミも好きでしょ。自己愛。

Asuka

……そう、だな。

Shiki

けどあたしはあたしが大好きだから、あたし自身に興味ないよ。
あたしが同じ存在のままでいる必要なんてないと思ってるし、
面白ければ変わり続けるよ。研究も止めるし、住む国も変える。

Asuka

キミは自分というものがあるのか、ないのか……。

Shiki

そんなの、興味なーい。
あたしがワタシでもボクでも自分でも拙者でもなんでもいい。

Asuka

……そういう考え方も、あるのか。

Shiki

キミとあたしのあいだに、どれだけの違いがある?
キミと杏ちゃんのあいだは? あたしと響子ちゃんの違いは?
女の子ってカテゴリで見たら、違いなんてどこにある?

Asuka

……全く違うが、違いなど無い。フッ、矛盾しているが。

Shiki

ヒトっていうのは、矛盾してるから面白いんだよ。

Asuka

ひねくれているボクだから、それは理解る。

Shiki

それに、科学や数学みたいな、常に一定の解を求める世界を
覗いてるとね。
もっとファジーな化学変化を期待したくなるんだー。

Asuka

ファジーな化学変化?
……それもまた、矛盾か。

Shiki

人間関係は化学変化だよ。

Asuka

むぅ……?

Shiki

あ、ねこだ。にゃー。にゃー?

街角

Shiki

にゃー。いなくなっちゃった。ねこ……。
まいっか。
わー、星キレイだにゃー。

Asuka

なぁ。話を続けてもいいか?
キミがさっき言った、化学変化の話だ。

Shiki

うん。
物質同士っていうのはね、結びつこうとしてるの。
結びついて、安定しようとするの。

Asuka

化学の話かい。普通の中二の学生なりの、相応の知識はある。
キミとは比べものにならないだろうけどね。
それで?

Shiki

酸素と水素が出会ったら水になっちゃうの。
酸素も水素もあんなに燃えやすいのに、水は燃えないんだよね。
それに、水が勝手に水素と酸素に戻ることはないよ。

Asuka

それくらい理解る。

Shiki

あたしもキミも、プロデューサーやファンという存在に
出会ってしまったんだよ。
そこで変化が起きて変えられてしまったら、もう戻ることはないんだ。

Asuka

……戻れない、か。
……っ、世界線を遡れば、あるいは。

Shiki

残念ながら、少し不思議なセンスオブワンダーに、
そこまでのパワーはないんじゃないかなー。

Asuka

……フッ、そうだな。それこそが物語の持つイフの強さ。
あるいは希望。

Shiki

だけど、あたしはこの現実で安定なんかしたくない。
水になってしまっても、形を変えることはできるもん。
だからこそ、変わり続けるんだよ。あたしはねー。

Asuka

……そう、さっき気になったことがあった。
響子さんたちの言葉を遮らなかったか? 匂いの話をした。
あれは……なぜだ。答えたくなければ……いいんだが。

Shiki

んー、あたしってゆー不定形の存在をあたし以外のヒトが
定義できると思う? 今のあたしと前のあたし、
同一だって決めつけるのは傲慢じゃない?

Asuka

ふむ…………そうだな。ボクらは同じ行動しかしないわけじゃない。
常に進化している。安易なテンプレートにカテゴライズされるのは
No Thank youだね。

Shiki

にゃふふー。気が合ったね。
それに実験なんかでの観察はさ、観測者のバイアスが
掛かっていることも自覚しなきゃいけないんだよねー。

Asuka

なるほどな。観測者のバイアス……か。
……っ、キミの生きているセカイと、
ボクらの見ているキミのセカイは違うとでも?

Shiki

イグザクトリィ。

Asuka

フッフッフ……ボクのワードを盗らないでくれないか。
次に使うときはコピーライト・アスカで頼むよ。

Asuka

それで、ここは何処だ。何処まで往くんだ。
明日はキミが主役の本番だぞ。いいのかそれで。

Shiki

どこにたどり着いたら、どこに行ったことになると思う?

Asuka

クイズや心理ゲームは安易に手を出したらいけないと
学んだんだが……。

Shiki

アイドルはなにができたらアイドルなんだろうね?

Asuka

歌、ダンス、パフォーマンス、トークにグラビア、
エトセトラ、エトセトラ……。

Shiki

アイドルはどこまで行ったらトップアイドルなんだろう?
誰に知ってもらえたら、あたしはアイドルになれるんだろう。
パパに見てもらえるのかな。ママに聞いてほしかったな。

Asuka

志希……。

Shiki

正解がないセカイって、正解がないから面白いんだよ。きっと。

Asuka

……フッ、そうだな。

LIVE当日

Kyoko

プロデューサーさん、あの……本当に大丈夫なんですか?
待つっていうのは、担当を信じるってことで分かるんですけど……。

Yumi

本番当日にドタキャンなんて……
まさか、志希ちゃんに限ってとは思うけど……。

Anzu

まー、なんとかなるんじゃない?
志希ちゃんがサボる理由、ないしさ。
ん……そんな話をしてたら、ほら。

Shiki

タクシーのおじさん、ありがとねー。らびゅー☆

Asuka

まったく、どこのアイドルが万札をポケットから出すんだ。
札や硬貨を効率的に持ち歩くための財布という道具を知ってるか。
泊めてくれた旅館だって、いい人達だったからよかったものの……。

Shiki

そーだねー。
あ、プロデューサー、響子ちゃんと夕美ちゃんと杏ちゃんだー。
フンフン……汗かいてるね、みんな。

Yumi

だー、じゃないよ ! 志希ちゃん ! 冷や汗かいたんだから !
もうリハも終わって、すぐに開演だよ !
着替えてメイクしなくちゃ !

Shiki

にゃははー。
うん。始まるから、来たんだよ。

Asuka

ふぅ……間に合ったか……。
プロデューサー。連絡したとおりだ。ボクの仕事は果たしたぞ。

Anzu

はー、杏も失踪したかった……。

Kyoko

ほらほら、安心するのはまだ早いですよ ! 支度しにいきましょ !
杏ちゃんももうちょっとだけ頑張って ! ねっ♪

Shiki

プロデューサー。
一ノ瀬志希っていう人間は、あたし自身でしか定義できない。
でも、一つだけ例外がある。

Shiki

アイドルの一ノ瀬志希を定義するのは、
プロデューサーの仕事だからね。
このステージは、どんなフレーバーがお好み?

P

最高のヤツを。

Shiki

にゃは♪
オッケー。最高のフレーバー、決めてくるよー。

Live: Himitsu no Toilette