A very merry usual day

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A very merry usual day

高垣楓の、神秘に包まれた高貴なプライベートに迫る !
そう息巻く番組Dの下、楓は一日取材を受けることに。
カメラマン兼隠密リポーターを任されたあやめは、
撮影日を知らない、オフの楓を追いかけるが…。
カメラが捉えたのは、お酒を楽しみ、友人と過ごす、
高垣楓というひとりの女性の等身大の日常だった。

'

事務所

Kaede

私の一日を取材したい……ですか?

番組D

はい ! モデルからトップアイドルへと
華麗な転身を果たした高垣楓さん。その美しき一日を、
お茶の間のみなさんへ特別番組としてお届けしたく !

Kaede

美しきだなんて……。
特別番組だなんて、ありがたいお話ですし、
私は構わないですけど……。

Kaede

プロデューサー、どう思いますか?
私、ご期待に応えられるでしょうか?

いつもの姿を
見せましょう

Kaede

いつもの……それでよろしいんですか?
特別じゃなくても……なら、わかりました。

番組D

おお ! ありがとうございます !
これは数字が取れるぞ~……。

番組D

題して「激撮 ! 高垣楓の華麗なる24時」 !
神秘に包まれた高貴なプライベートを、
余すところなくファンにお届けしましょう !

Kaede

あのディレクターさん、面白いことをおっしゃってましたね。
高貴なプライベートをお届け、だなんて……
好奇心が旺盛ですね。ふふっ。

Kaede

少し緊張してしまいますけど……。
いつもの私で構わないと、おっしゃっていただけたので、
あまり気負わず、撮影していただくことにします。

Ayame

……ふむ。お話は確かに聞かせていただきました。

よろしくね

Ayame

はっ。必ずや使命を果たしてみせましょうっ。
では、これにて。ニンッ !

取材当日

Ayame

始まりました ! 「激撮 ! 高垣楓の華麗なる24時」 !
同行カメラマン兼リポーターは、この忍ドル浜口あやめです !

Ayame

今日は楓殿のオフに密着ということで、
どのような休日を過ごしているのか、
お邪魔にならぬよう、影として見守りたいと思います !

Ayame

なお、楓殿には今日が撮影日だとは伝えておりません。
まさしく素の姿が見られると思います !

Ayame

それではさっそく、楓殿の様子をお届けします ! ニンッ !

スポーツジム

Ayame

楓殿の朝は早い……。
そのスタイルを磨き上げるべく、
スポーツジムに通われているそうです !

Ayame

……が、どこにも見当たりませんね。
はて……?

番組D

おかしいな……プロデューサーさんに聞いた話では、
今日はここで汗を流すってことだったんだけど……。

???

はっ ! うっ……ぬぬぬ……ふんっ ! ふっ……ぬぬぬ……ふうっ !

Ayame

おや、この声は……。

Mizuki

ふぅ……大胸筋はこれでよし、っと。
ん? ……あら、あやめちゃん。おはよう♪
今日はマイク片手に……リポーターのお仕事?

Ayame

瑞樹殿、おはようございます !
はい、楓殿のプライベートに密着という企画なのですが、
肝心のご本人が見当たらず……。

Mizuki

あら、楓ちゃんだったら、ついさっき連絡が来てたわよ。
ほら、こんなメール。

Kaede

久々のオフなので、昨日は気持ちよく飲んでしまいました。
今日は昼まで高いびき、ならぬ高垣いびきです……。

Ayame

な、なんとっ !

番組D

の、飲みすぎ……? 高垣いびき……?

Mizuki

せっかく来たのに撮れ高が無いのも困っちゃうわよね。
はっ ! そうだ、ミズキのスペシャルスタイルアップメニューの紹介とか、
どう? どう?

Ayame

ほう……その秘伝、ぜひご教示たまわりたくっ !

Mizuki

まかせて ! まずは、ウォーミングアップからよ !

番組D

……ま、まあいいか。まだ一日は長い。
トップアイドルも、飲みすぎることくらいあるよな……。

事務所

Ayame

楓殿の昼はビューティフル……
きっと、体に良い素敵なランチをしているに違いありません !

Ayame

先ほど、瑞樹殿から仕入れた情報によりますと、
楓殿は忘れ物を取りに事務所へいらっしゃるそうです。
ここで待ち伏せしたいと思います !

Ayame

……む、誰か来ますね。
忍法・隠れ身の術 ! ニンッ !

Miyu

おはようございます。
……あら、誰かいたように思ったけど……気のせいかしら。

Kaede

木の精かもしれませんね。
観葉植物とかの。

Miyu

はい……?
そうですね。
楓さん、お昼は事務所でいいんですか?

Kaede

ええ。せっかく朝はゆっくりできたので、
お弁当を作ってみたんです。
どこか、景色の良い所で食べようかと思って。

Miyu

それなら、お外に出かけた方が……。

Kaede

美優さん、このあと打ち合わせでしょう? 事務所で大丈夫です。
それに景色だったら……ここから見える都会の風景も素敵ですよ。

Miyu

……はい。では、ご一緒させていただきますね。
私もお弁当を持ってきたので……と言っても、
昨日の残りと卵焼きくらいですけど……。

Kaede

それを言うと、私は梅干しのおにぎりとお漬物くらいです。
よかったら、つまんでください。自家製ですから。

Miyu

いただきます。では、私の方も、よかったら。

Kaede

まあ、嬉しい。いただきます。
……なんだか、こうしていると、学生時代のお昼休みみたいですね♪

Miyu

うふふっ。そうですね、おしゃべりして、
お弁当のおかずを交換して……懐かしい。

Kaede

美優さんの学生時代ってどういう感じだったのかしら。
興味ありますね。聞かせてくれますか。

Miyu

普通、だと思いますが……?
そんなに面白い話はありませんけど……。

Kaede

はい。
私も、普通ですけど。うふふっ。

Miyu

……あら、もうこんな時間。
私、そろそろ行きますね。

Kaede

はい。じゃあ私も出かけます。
ごちそうさまでした。また、お昼しましょうね。

Miyu

ぜひ。今度はもうちょっと、しっかりしたおかずを用意しますね。

Ayame

はぁ……行きましたか。ふぅむ。ビューティフルというよりは
ピースフルというかリーズナブルというか。微笑ましい光景でした。

番組D

うーん……撮りたかった画ではないんだよなぁ……。
……そうだ。

Ayame

むむ……?

Ayame

楓殿を追いかけ、街なかへ来ましたが……
ついにビューティフルな楓殿が見られるでしょうか !

Kaede

あら、このバッグ……。

番組D

おおっ、ブランドのバッグをチェックする楓さん !
これこれ、こういうのだよ !

Kaede

バッグ……バグ……防虫剤……ううん、違いますね。
バッグ……バックバク……これもいまいち……。

Ayame

どうやら、ダジャレを考えてるようですね。

番組D

えっ、もしかして楓さんって、オフの時もそういう人なの?
キャラとかではなく?

Ayame

ご存じなかったんですか?

番組D

う、むむむ……これでは番組の趣旨が……。
いや、次の一手で一気に挽回だ…… !

Kaede

あら、電話に出るわ……もしもし。
早苗さん?
今晩ですか? いいですね、お誘いありがとうございます。

Kaede

……わかりました。
キャッチが入ってしまったみたいなので、また、後でご連絡しますね。

モデル

高垣さん、こっちこっち。
ごめんね、急に呼び出しちゃって。

Kaede

ご無沙汰してます。お元気でしたか?

モデル

うん、元気。
えっと、なんとなく久しぶりに会いたくなっちゃって。
とりあえず、シャンパンでも飲まない?

Kaede

はい。でもなんだか、突然で驚いてます。
その……。

モデル

だよね、仕事では一緒だったけど、プライベートは全然だったし。
今日、来てくれるんだって、こっちもビックリしたー。

Kaede

そうですね……その節は、すみません。

モデル

謝ることないって。お互い様でしょ。

Ayame

……お知り合いの方でしょうか?
モデルさんのように、美人でいらっしゃる。
なんだか大人の雰囲気ですね…… !

番組D

これだよ、これ !
昼下がりにシャンパンをかたむけるモデルふたり…… !
楓さんにピッタリのシチュエーションを仕込んだかいがあった !

Ayame

仕込んだ? つまり、あのモデルの方は……。

番組D

そう、昼にお願いしてね。
楓さんの昔のモデル仲間の子に誘い出してもらったワケ。

Ayame

……それで良いのですか?
つまり、ヤラセ……。

番組D

いいんだよっ ! ちょっとした気配りというか、根回し ! 演出 !
全く問題なしっ。

Ayame

ふむ……。

モデル

あ、飲み物きたよ。とりあえず写真撮ろっか。
グラスもってー、はい、連写でいくよー。

Kaede

はい……ピースっ。

モデル

……なんか、雰囲気変わったね。

Kaede

そうでしょうか……そう、ですね。
自分でも、そう思います。

モデル

ま、とりあえず飲もっか。他人のお金だし。

Kaede

他人の?

モデル

あ、こっちの話。
店員さん、すいませーん……。

番組D

よーし、このままの流れで、夕暮れを見ながらホテルでエステ。
最後はナイトクルーズで夜風に浸る楓さんの画をいただいて……。

Ayame

それも、仕込みですか。
はぁ……それならば、こちらも……。

Kaede

あ……もうこんな時間ですか。
そろそろ……。

モデル

次に行く? エステ予約してるんだけど、えーっと……
そう、友だちがドタキャンしちゃって。つきあって?

Kaede

ええと……その、この後ですけど……。

Sanae

あれーっ ! ? 楓ちゃん、偶然じゃない !
お友だちとお食事? どうもー !

Kaede

あら、早苗さん。どうしてこちらに?

Sanae

んー?
そうね、楓ちゃんとの飲み会の前にちょっとぷらっと?
いやー、でもちょうど会えてよかったわ !

Kaede

……ありがとうございます。
私も、早苗さんに会えてよかったです。

Sanae

うん♪ あ、お邪魔だった?
あたしってばお邪魔しちゃうのよね。出るとこ出てるから !

モデル

……あー、大丈夫です。解散しようってところだったんで。

Kaede

よろしいんですか? その、次の予定は……。

モデル

気にしなくていいよ。っていうか、本当に変わったね。
……うん、今の方が良いんじゃない。じゃあ、私はこれで。

Kaede

ごちそうさまでした。さようなら。
……ふぅ。
なんだか、かしこまったお店で肩がこっちゃいました。

Sanae

じゃあ、いつものトコ、いっとく?
みんなにも声かけてるわよ !

Kaede

はいっ♪

番組D

おーいおいおい ! 話が違うよ…… !
なんでこんな流れに……。

Ayame

(……ふっふっふ。これぞ忍法・根回しの術 !
貴方の手管をマネさせていただきましたよ。
先ほど、早苗殿に連絡しておいたかいがありました。)

Ayame

……さあ、ディレクター殿 ! ふたりを追跡しましょう。
置いていかれてしまいますよっ。ニンッ !

居酒屋

Sanae

はーい、おっまたせー !
楓ちゃんの到着よー !

Kaede

お待たせしました。

Mizuki

遅いー ! 先に美優ちゃんと、始めちゃってたわよー !
あぁはいはいっ、座って座って ! かけつけ一杯~♪
おじさん、生ふたつー !

Miyu

ふぁ……早苗さん、お疲れさまでした~。
楓さん、待ってました~。
お好きな梅和え、とっておきました~。

Kaede

ふたりとも、すっかり出来上がってますねっ。
これは私もピッチをあげて、追いつかないと。

Mizuki

あげてあげて ! ピッチピチにねー !

Kaede

うふふっ。じゃあ、ピッチャーでいただこうかしら。

Miyu

ぴっちゃー? 友紀ちゃん、今日はお仕事ですよ~?

Sanae

美優ちゃんもダジャレ合戦に参加? 飛ばしてるわねー !
車もお酒もスピード違反は厳禁よー !

Miyu

ひっく……これ以上はあげられません~。
エンスト~。

番組D

はぁ……これじゃあ企画にならないよ……。

Ayame

そうですか?
楓殿らしさが伝わる映像になったかと思いますよ。

Kaede

あの、あやめちゃん。今日は撮影お疲れさまです。
私らしさ……特別じゃなくて、等身大の私は
ちゃんと伝わったでしょうか?

Ayame

ぬわっ ! ? かっ、楓殿 ! ? 気づいていたんですかっ ! ?

Kaede

それは……隠れみのがヒラヒラしていたり、
時々、声が聞こえていましたから。

Ayame

不覚っ…… !

Kaede

ディレクターさん、ごめんなさい。
私に期待をして、夢を見ていただけるのは、
アイドルとして嬉しいかぎりです。

Kaede

でも、もう私は飾って生きることはやめにしたんです。
だから……今は、この自然な姿の高垣楓を、
みなさんに見ていただきたいの。

番組D

楓さん……。

LIVE当日

Ayame

結局、あの映像はそのまま使われたそうですっ。

Mizuki

特集の名前は「歌姫・高垣楓の飾らない素顔」になったのね。
あのディレクターもやるじゃない。

Miyu

居酒屋のくだりは、ナレーションベースで
上品にしていただいてましたけど……。

Sanae

あはっ。ほどよく親しみやすい
楓ちゃんをお届けできたんじゃない?

Kaede

ふふ……そうだとしたら、なによりです。
でも、それも全部、みなさんのおかげですよ。

Mizuki

あら、何かしたかしら。
私なんてトレーニングして、宴会してただけだけど。

Kaede

今までの私の周囲には、私のことをわかってくれる人や、
いっしょに過ごしてくれる人は、ほとんどいませんでした。

Kaede

特別なことをしていなくても……
みなさんは私にとって特別なんです。

Mizuki

……うふふっ。
やあねぇ。なんだか下手っぴなプロポーズみたい。
楓ちゃん、とっても嬉しいわ。

Miyu

はい。私にとっても、
芸能界の先輩として、同世代の友人として、楓さんは特別です。

Sanae

いっしょに頑張ったり、いっしょにバカやったり。
やっぱり仲間っていうのは大事よね♪

Ayame

皆さんの大人の友情……おみごとですっ !
ささっ、そろそろLIVEのお時間のようですよ !
参りましょう !

Kaede

ええ。こんな私を好きでいてくれる、ファンのみなさんに……
今度は、少しだけ特別な私をお見せしに行きましょうか。

Live: Koi Kaze

LIVE後

Kaede

ふぅ……夜風が気持ちいい……。
LIVE後の火照った顔を冷ましてくれますね。

Kaede

プロデューサー。
ありがとうございました。特別番組のこと……。

Kaede

いつもの私でいいとおっしゃってくれなかったら……
もしかしたら、昔のように取り繕ってしまったかもしれません。

Kaede

本当は、少しだけ……飾らない自分を見せることに、
ドキドキしていました。

Kaede

でも、そんな自分でも大丈夫だって、自信をくれたのは……
プロデューサー、貴方です。

Kaede

私に新しい風を吹き込んでくださって、
その風にのって、気づけばこんなに高いところまで
たどり着くことができて……。

Kaede

この先、どこにたどり着くのかは、まだわかりません。
けれど、どうなったとしても、高垣楓という人間は変わりません。

Kaede

どうか、そのことを……
プロデューサーだけはずっと覚えていてくださいね。

約束です

Kaede

……はいっ。
さあ、みんなが待っています。
打ち上げ会場に急ぎましょう♪

Kaede

どうか、こんな日々がずっと……
未来までずっと続きますように……。