Naked Venus
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Naked Venus |
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自分のステージを前に美波は頑張りすぎていた。心配する文香や楓など、仲間に支えられて、徐々に肩の力が抜けていく。やがてLIVEを終えた美波の姿は、まるで女神のように美しく凛と輝いていたのだった。 |
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レッスンルーム |
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Minami |
ふぅっ……。 歌のレッスンは、これくらいにしておこうかな。 次は、ダンスレッスンをしなくちゃ。 |
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Fumika |
……美波さん、 さきほどからずっと自主レッスンを続けていますが、 大丈夫ですか? |
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Minami |
うん、大丈夫 ! もうちょっと、やっておきたくって ! |
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Fumika |
……そう、ですか? 私からは、もう十分なように、見えるのですが。 |
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Minami |
そうかな? やっぱり、レッスンってどんなにやっても 安心できるものじゃないからっ。 |
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Fumika |
……とはいえ、本番前日ですし、 身体を休めるのも大事なのではないでしょうか。 |
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Minami |
でも……。 |
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Fumika |
……差し出がましくて、すみません。 ですが、美波さんは、レッスン前にも何件か、 お仕事をしてきたと伺ったものですから……。 |
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Minami |
あ、そうだけど……。 あんまりハードなお仕事じゃないよ? |
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Fumika |
……そうなのですか? |
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Minami |
うん、午前中に撮影が一件と、取材が一件、 それと、ラジオ番組に出たくらいで……。 |
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Fumika |
……それは……控えめに言って、 働き過ぎ、なのではないでしょうか。 そんなにお仕事をこなしてから、何時間もレッスンなど……。 |
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Minami |
うん、でも、やっぱり心配で。 今回は自分が主役だし ! |
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Fumika |
……ユニットと、ソロのステージでは、やはり違いますか。 |
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Minami |
そうねぇ……誰かに甘えられないから、 身が引き締まる感覚はあるかも。 でも、お仕事はどんなときでもいつも全力投球したいなって ! |
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Fumika |
……その前向きさは、私にはまぶしく思えます。 |
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Minami |
ふふっ。そんなことないよ。 私はただ、中途半端な自分が許せないだけなの。 |
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Fumika |
……気位が高いのですね、美波さんは。 でも……いつかのように、倒れてしまっては、 元も子もないのではありませんか。 |
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Minami |
それは……そうね……。 |
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Fumika |
……自分につとまるのか不安で、レッスンに打ち込む気持ちは 私も……よく、分かります。それこそ、痛いほどに。 |
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Minami |
文香さん……。 |
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Fumika |
……だから、美波さんは、もっと自分を大事にしてください。 目標が高いのは分かりますが、もう十分、輝いているのですから。 自分に自信のない私が言うのも、おこがましいお話ですが……。 |
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Minami |
……うん。 |
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Fumika |
あっ……その、失礼なことを言っていたら、謝ります。 どうにも、会話を通じて、人と距離を測るのが 下手な人間なのです、私は。 |
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Minami |
……ううん。ありがとう。 私のことを思って言ってくれたのは、 ちゃんと伝わっているから ! |
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Fumika |
では……。 |
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Minami |
うん、最後にちょっと、レッスンの仕上げだけ……。 |
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Fumika |
美波さん……。 |
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Minami |
ふふっ。ちょっとだけなら、いいでしょ? |
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Fumika |
……ふふっ。仕方のないひとですね。 |
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Minami |
ふぅっ……これくらいにしておこうかな? 文香さん、付き合ってくれてありがとね。 |
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Fumika |
いえ、私は特に、なにも……。 |
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Kaede |
あ、いたいた……。 ふたりとも、お疲れさま。 美波ちゃん、探したのよ~。 |
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Minami |
楓さん……お疲れさまです。 どうしたんですか? |
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Kaede |
いいから、ちょっと付き合ってくれる? あっ、文香ちゃんは……また今度、お願いするわ♪ |
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Fumika |
はぁ……。 |
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Minami |
じゃ、じゃあ、文香ちゃん、また明日ね ! ちょっと楓さん、押さないでください~ ! |
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Kaede |
ほらほら、歩いて歩いて♪ |
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Fumika |
……? |
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Minami |
それで……どうしてこんなことに……? |
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Kaede |
ふふふ……いいじゃない、一杯くらい付き合ってくれても。 いっぱい付き合って、なんて言わないから~。 |
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Minami |
もう、一杯どころか何杯目ですか ! ? 楓さんったら、着いてそうそう飲むペースが早すぎますよっ。 |
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Kaede |
だって、美波ちゃんはまだ飲めないでしょう? だから、私がその分いただかなきゃっと思って……。 |
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Minami |
あの、全然理由になってませんけど…… ! |
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Kaede |
んふふ、細かいこと気にしてると、 誰かさんみたいに老けちゃいますよ~。 |
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Minami |
誰かさんって……。 |
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Kaede |
あ、店員さ~ん、おつまみセット、お願いしま~す。 |
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Minami |
はぁ……。 それで、こんなところに私を連れ出して、何のつもりですか? |
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Kaede |
あら、何のつもりだなんて。 ともに同じ会社の同僚同士、 お食事でもして、親睦を深めたいなぁって。 |
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Minami |
……明日がステージ本番っていう、アイドルを連れてですか? |
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Kaede |
あら、美波ちゃん明日が本番だったのー? 頑張らなきゃねー。 |
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Minami |
もうっ、しらじらしい演技は無しです。 |
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Kaede |
ふふ、はぁい。そうね、きっと美波ちゃんのことだから、 今日も倒れそうなくらい頑張ってるんじゃないかと思って、 息抜きに誘おうと思ったの。これは50%本音。 |
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Minami |
楓さん……そうだったんですか。じゃあ、残りの50%は? |
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Kaede |
今日、お仕事してるときにふと思ったの。 今夜は、ワインの気分だなって。 |
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Minami |
……へ? |
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Kaede |
そう思ったら、もう飲みに行くしかないじゃない? でも、最近川島さんは忙しくて付き合ってくれないし、 プロデューサーさんも忙しそうだから誘いづらいし……。 |
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Minami |
そ、それで……私? |
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Kaede |
美波ちゃんは気分転換、私は楽しくお酒が飲める……。 いいことずくめじゃありませんか♪ |
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Minami |
なんだか、すごく心に引っかかるものがありますけど……。 その、ありがとうございます。誘ってくださって。 |
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Kaede |
ちらっとスケジュールを聞いたけど、 今日も詰めこんでたんでしょう? いろんな子が心配してたんですからね。 |
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Minami |
それは……そうなんですけど、 やっぱり自分だけのステージだと思うと、 レッスンしても、したりないですし……。 |
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Kaede |
はぁ……このワイン、美味しい♪ |
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Minami |
か、楓さん……もう、聞いてました? さすがの私でも、酔っ払いを相手じゃ まともにお話なんてできませんよっ。 |
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Kaede |
ふふ。美波ちゃんはまだ飲めないから、 味は分からないかもしれないけど……。 ワインがどうして美味しくなるか、分かるかしら? |
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Minami |
へ? それは、酵母が葡萄に含まれる糖分を アルコールに分解する……とか、そういうことでしたか? |
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Kaede |
あら、優等生の答え。 私はね、樽で寝かされるから美味しくなるんだと思うの。 |
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Minami |
は、はぁ……? |
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Kaede |
アイドルだって同じよ。 レッスンやお仕事を、自分って樽の中に詰めこんだとしても、 それだけじゃ美味しくは変わらないわ。 |
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Minami |
はぁ……。 |
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Kaede |
それを、自分の中で寝かせて、 自分の身にする時間が必要ってこと。 つまり……ふぁぁ……寝かせないと。 |
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Minami |
な、なるほど……? |
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Kaede |
なんだか、小難しい話してたら、眠たくなってきちゃった……。 まぁ、とにかく、美波ちゃんも自分を寝かせて……ね。 |
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Minami |
寝かせる……ですか。 わかったような、わからないような……? |
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Kaede |
ふわぁぁぁ……はー、気持ちいい……。 美波ちゃん、あとはよろしく~。 すぅ~……すぅ~……。 |
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Minami |
えっ ! ? ちょっと楓さん、ここで寝ちゃダメですよ ! アイドルなんだから、こんなところを他の人に見られたら……。 あ、ちょ、ちょっと ! |
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Minami |
ふぅ……。 楓さんをマンションまで送っていったら、こんな時間……。 |
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Minami |
でも……ちょっとよく分からなかったけど、 楓さんなりに励まそうとしてくれたのかな……。 |
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Anastasia |
……ミナミ? |
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Minami |
? ? ? |
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Anastasia |
ダー、ミナミでしたね。 アーニャです。ドーブリィ・ヴェーチェル♪ |
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Minami |
えっと、ドーブルイ……ヴィエーチル。 こんばんは。アーニャちゃん。 ……どうして、こんなところに? |
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Anastasia |
アー……レッスンしていて、遅くなりました。 だから、夜空見ながら、散歩して帰ろうと思って。 ミナミは、どうしましたか? |
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Minami |
そうなんだ。……あのね、私の方はね、もうひどいの ! 楓さんったら、レッスン途中の私をいきなり連れ出して 自分だけ楽しく酔っ払ったと思ったら寝ちゃって……。 |
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Anastasia |
ン、ンー? |
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Minami |
それで、酔った楓さんを置いて帰るわけにいかないから、 楓さんのマンションまで連れていって、 明日の朝の目覚ましまでセットしてきたんだから ! |
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Anastasia |
ふふ、ミナミは、気がききますね? |
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Minami |
あっ、ごめんね。 私ったら、勢いで喋っちゃって……。 |
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Anastasia |
いいです。ミナミはエライです。 みんな、そのことを知っていますね。 だから、誰も何も言いません。信頼、しています。 |
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Minami |
アーニャちゃん、私、そんなことは……。 |
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Anastasia |
けど……何も言わないけど、心配しています。 ミナミは、いい人です。優しいです。自分にも、厳しい。 だからみんな、心配していますね。 |
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Minami |
そう……。ごめんね、心配かけちゃって。 |
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Anastasia |
アーニャは、ミナミのこと、みんなより少し、分かってます。 だから、心配してるって伝えても、いいですね? |
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Minami |
うん ! 思ったことは、言ってほしいな ! |
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Anastasia |
じゃあ、明日のステージは、頑張らないでください。 |
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Minami |
えぇっ ! ? 頑張らないでって、それは、どういう……。 |
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Anastasia |
ミナミらしい、リラックスした姿、みたいです。 キリっとしたミナミも、すてきですね。 でも、ずっとキリッとしていたら、疲れてしまいます。 |
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Minami |
そっか……アーニャちゃんも、気にしてくれてたのね。 ありがとう。心配かけちゃうなんて、思わなかったから……。 明日は、私らしく、リラックスしてステージに立つね。 |
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Anastasia |
ダー。がんばりましょう。 |
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Minami |
今日は、私ひとりのステージですけど……。 心は、たくさんの人に支えられています。 みなさんに感謝の気持ちを持って、挑みたいと思います ! |
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Anastasia |
ミナミ ! ジェラーユゥダーチ ! がんばってください ! |
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Minami |
うん ! じゃあ、美波、いきます ! |
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LIVE後 |
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Minami |
ふぅ……。ありがとうございました ! |
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Fumika |
素晴らしいステージだったと、思います。 その……面白みのないコメントで、恐縮ですが……。 |
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Minami |
ううん、その気持ちで十分 ! 心強かったわ ! |
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Kaede |
うふふ。美波ちゃん、昨日はありがとう。 おかげで今日もこうして一緒に、 素敵なステージを体験できたから。 |
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Minami |
こちらこそ……楓さんらしいアドバイス、 ちゃんと受け取りましたよ ! |
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Kaede |
あら♪ なら次は、もっとい~っぱい飲みましょうね♪ |
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Fumika |
では、私はここで……。 お疲れさまでした。 |
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Kaede |
あっ、じゃあ私もここで。またね。 |
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Minami |
二人とも、またお願いしますね ! お疲れさまでした ! |
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Kanade |
美波、お疲れさま。 あなたらしい凜々しさも柔らかさもあって、 いいステージだったじゃない。 |
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Anastasia |
ミナミ、ステキでした。キラキラ、していましたね? |
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Minami |
奏さん、アーニャちゃん、ありがとう ! 今日は、ちゃんと歌えた気がするの。 |
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Anastasia |
ちゃんと、ファンの人たちにも、届いていましたよ♪ |
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Minami |
ふふっ ! よかった ! いっぱい踊ったかいがあったわ ! 熱くなっちゃった ! |
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Kanade |
そう……なら、このあたりを散歩でもしない? 海風が吹いて、気持ちいいの。 火照った身体を冷ませるわ。 |
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Minami |
そうなんだ、撤収まではまだ時間がかかるみたいだし……。 少しくらいいいかな? |
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Kanade |
じゃあ決まりね♪ |
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Minami |
ふぅ、風が気持ちいい……。 |
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Kanade |
美波、アーニャ。 靴を脱いで、裸足で浜辺に降りてみない? ほら。冷たくて、気持ちいいわよ。 |
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Anastasia |
ダー。いいですね。私、いきます ! |
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Minami |
あっ……二人とも、ちょっと……。 そんな、裸足だなんて……。 |
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Kanade |
いいから、来て。 ほら、こっちに。 |
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Minami |
うん……わかったわ。 |
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Minami |
冷たい……けど、砂の感触が、心地良い……。 |
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Anastasia |
ミナミ ! 波と夕陽です ! クラスィーヴァ ! ウフフッ、アハハハハッ。 |
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Minami |
うん ! そうね……。きれい。 |
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Kanade |
ふふっ。靴やサンダルを脱いだだけなのに、 なんだか感じ方まで変わるみたいよね。 |
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Minami |
えぇ……。ふふっ、アーニャちゃんったら、あんなにはしゃいで。 久しぶりにあんな姿見たなぁ……。海が好きだったのかな? |
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Kanade |
くすっ……、かもね。 ……美波って、いい名前よね。この海みたい。 |
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Minami |
あぁ……父が、海の仕事をしているから。 それにしても、奏さんったら、思わせぶりね。 ふふふっ、わざわざこんなところに連れ出して、裸足にさせて。 |
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Kanade |
そうね。演出家なのよ。それに、あなたのパートナーが いろいろ気にしていたようだったから……。 ちょっとしたおせっかいね。 |
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Minami |
……アーニャちゃんが? そうだったの……。 私、一人で頑張らなきゃって思っていたのに……。 みんな、優しいな。 |
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Kanade |
あなたが優しいから、みんなが優しくしてくれるのよ。 シンプルな解だわ。 これからも、あなたらしくいてね。 |
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Minami |
えぇ。……さてと、帰らなきゃ。 きっとプロデューサーさんが気にしてるわ。 |
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Minami |
アーニャちゃん ! 帰るよー ! |
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Anastasia |
ダー ! アー、ミナミは……海が似合いますね。 |
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Minami |
……そう、かな? |
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Anastasia |
そうです……あー、ヴィーナスみたい、ですね♪ ふふっ。 |
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Kanade |
裸足のヴィーナス……ね。 |
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Minami |
……もう、ふたりとも、からかわないのっ ! |
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