LIVE Groove Dance burst (October 2016)/Commus
Opening[edit]
The Way I am. |
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洋館に集った紗枝、まゆ、かな子、奏、そしてゆかり。5人はPから、それぞれが役を務めるドラマのお仕事を知らされる。ドラマの主題歌は『あいくるしい』。自分と似た役にそれぞれの想いを抱えつつも、5人は助け合い、お仕事に臨むことを誓うのだった。 |
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洋館 |
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Mayu |
今日はどうしてここへ呼ばれたんでしょう? 紗枝ちゃん、知ってますか? |
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Sae |
いいえ~、うちもなぁんにも知りまへんえ。 現地集合、いう話しか聞いてまへん。 かな子はんは、知ってます~? |
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Kanako |
私も知らないですね~。智絵里ちゃんと幸子ちゃんもいたら、 『パステルピンクな恋』のときと同じでしたけど、 今回はいないみたいですし……。 |
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Mayu |
じゃあ、プロデューサーさんが来るまで、真相は謎ですね……。 |
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Kanako |
あ……なら、それまでおやつでも食べて待ってようか♪ |
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Sae |
かな子はんは、ほんまにいっつも準備がええなぁ~。 ほな、まゆはんも、お茶にしまひょ~。 |
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Mayu |
はぁ~い♪ |
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Kanade |
あら、優雅なティータイム? さすが、仲良し女の子達って感じね。 |
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Mayu |
あっ、奏さん。お疲れさまです。 それと……あら? |
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Yukari |
みなさん、おはようございます。 今日は、よろしくお願いしますね。 |
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Kanako |
あ、ゆかりちゃんも一緒なんだ。 おはよう~。 |
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P |
おはよう。 |
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Sae |
あらあら~、プロデューサーはんもいてはったんどすか~。 はて、3人が同時に来たー、いうことは、つまり~? |
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Mayu |
もしかして、この5人で……? |
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P |
お仕事だよ。 |
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Kanade |
よろしくね、みんな。 |
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Yukari |
みなさんとご一緒するのは初めてですね。 お世話になります。 |
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Kanako |
そっか~、いっしょに頑張ろうねっ ! |
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P |
詳細はこの企画書を。 |
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Sae |
はいな~。 ほうほう……まゆはん、うちらの歌、『あいくるしい』が 使われるんやて~。 |
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Mayu |
へぇ……ドラマの主題歌なんですね。 まゆたちが、メインキャスト……うれしい……。 |
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Kanako |
今回のドラマは『愛』がテーマなんですね。 洋館の少女達のお話って書いてありますよ。 それをこのスタジオで撮影するんだ~。 |
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Kanade |
だからここ集合だったのね。それに、配役も面白いわ。 みんなの性格と似ているけど、少し違うキャラクター。 演じがいがありそう。 |
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Yukari |
……あの、私、こういうお芝居に挑戦させていただく経験は、 あまりなかったのですが、大丈夫でしょうか? |
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Sae |
ゆかりはん、大丈夫どす。 うちらみぃんな、いっしょに気張りまひょ~。 |
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Yukari |
紗枝さん……はい…… ! |
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Kanako |
みんな、どんな役なんだろう~? 私の役は、えーと……愛に包まれている少女? 包まれてって……どういうことなのかな。まゆちゃんは? |
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Mayu |
まゆの役は……えぇと……愛を信じている少女、ですか……。 愛を、信じている……ふぅん? 紗枝ちゃんは? |
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Sae |
うちは、愛を伝える少女、やて。 はー、ようわかりまへんなぁ……。 |
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Kanade |
みんな、まだいいじゃない。 私なんて、愛を失った少女よ? ま、脇役としてはそれくらいがちょうどいいけど。 |
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Kanako |
ふふふっ。奏さんだけ、なんだか、重たいですね。 じゃあ、ゆかりちゃんはどんな役? |
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Yukari |
私は、愛を知らない少女、だそうです……。 あの、私の名前が一番初めに、書いてあるんですけど……? |
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Sae |
あら~、ゆかりはん、これは人一倍、気張らなあきまへんな~。 |
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Kanade |
今回は私たち5人がメインのキャストだけど、 そのなかでもあなたが中心になるってことね。頑張って。 |
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Yukari |
そんな、私にはそんな大役……いいんでしょうか? 楽曲だって、まゆさんと紗枝さんの曲ですし……。 |
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Sae |
ええんちゃいます~? まゆはんとうち、ふたりでうたった歌やけど、 ゆにっとそんぐ、いうわけでもあれへんし。 |
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Mayu |
そうですね。 まゆたち以外の人が歌うことで、 楽曲も、もっといろんな面が見られると思いますよ。 |
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Kanako |
そうだね。私も、歌うのが楽しみだよ~。 |
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Yukari |
そういうもの、なんでしょうか……。 でも、みなさんを差し置いて、主役級とは……。 |
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Kanade |
気にしないの。 全員主役なんて、そんなこと、映画でもめったにないんだから。 配役表があったら、絶対に順番はつくでしょ。 |
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Yukari |
……そういうものでしょうか? |
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Kanako |
うんっ。 あとほら、まゆちゃんも紗枝ちゃんも、優しいから大丈夫だよ。 |
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Mayu |
えぇ。それに……まゆたちのプロデューサーさんが選んだんですよ。 きっと、できると思ってるから選んでくれたんでしょうし……。 選ばれたからには、自分の役をちゃんとやらなくちゃ。まゆ自身も。 |
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Sae |
あ~ら~、まゆはん、前に比べて、成長しましたなぁ~。 |
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Mayu |
そ、そういうことをプロデューサーさんの前で 言わないでくださいっ。 |
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Kanade |
ふっふふっ。 |
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Mayu |
ですから。ゆかりちゃん。 まゆたちも応援しますから、気にせず、いいものを作りましょう。 |
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Sae |
困ったことがあったら、なぁんでもうちらに相談してや~。 |
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Yukari |
……はいっ。ありがとうございますっ。 |
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P |
では、今日から頑張って。 |
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Mayu |
はいっ ! はい~。 はいっ。 |
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Kanade |
ええ。 はい ! |
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Chapter 1[edit]
言葉にせずとも |
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今回、5人の中でも中心的な役を任されたゆかり。だが、ゆかり自身にはまだその実感がなかった。まゆと紗枝は、新たな仲間と仲良くできることを嬉しく思っていた。3人で話すうちに、ゆかりと紗枝に共通点も見つかり、一同は打ち解け合う。こうして、お仕事が新たな繋がりを生んでいくのだった。 |
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中庭 |
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Yukari |
素敵なお庭……こんな場所もあるんですね……。 撮影はまだまだ先とのことですが、今から楽しみです。 |
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Sae |
せやなぁ~。 まゆはんがこないだ歌ってはった曲のいめーじにも近いどすな~。 |
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Mayu |
そうですね。 あのときも、愛がテーマでしたけど……。 今回はまた違った愛のお話になりそうです。 |
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Sae |
ほんまやなぁ。 せやけど、今回は前に前にやあれへんなぁ。 |
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Yukari |
……といいますと、どういうことなのでしょうか? |
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Mayu |
プロデューサーさんが選んでくれたのは、うれしいことですけど、 まゆと紗枝ちゃんだけではなくて、ゆかりちゃんやかな子ちゃん、 奏さんも一緒でしょう? |
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Yukari |
……そうですね。 |
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Mayu |
他の人を押しのけるより、やるべき事をしっかりやって プロデューサーさんに認めてもらう方がいいんです。 いつも主役とは限りませんから。それと……。 |
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Yukari |
それと? |
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Mayu |
お友だちが増えるのは、うれしいことですから。 今回みたいに、お仕事で一緒になるたびに、 いろんな人と仲良くなれたら、いいなぁって。 |
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Sae |
せやなぁ。うちも、同じ気持ちどす。ゆかりはん。 これから、仲良うしたってや~。 |
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Yukari |
まゆさん、紗枝さん……。こちらこそ、 ふつつか者ですが、仲良くしていただければ嬉しいです。 よろしくお願いします。 |
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Mayu |
こちらこそ。うふふ。 |
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Sae |
なんや、ゆかりはんが嫁入りしてきはるみたいやなぁ~。 |
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Yukari |
嫁入りだなんて、そんな……。 |
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Mayu |
でも、まゆ、思うんですけど……。 |
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Sae |
なんどすやろ~? |
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Mayu |
紗枝ちゃんとゆかりちゃん、なんだか……。 |
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Yukari |
なんだか……? |
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Mayu |
似てますね。 黒髪の雰囲気とか、落ち着き具合とか……。 |
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Sae |
ほんまどすか~。 ゆかりはんの方が身長はありますけど~。 |
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Yukari |
……そうですね。 あとは……私、A型の右利きですけど、紗枝さんは? |
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Sae |
あら~、うち、AB型やなぁ~。 個性的、いうてよう言われるんどす~。 |
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Mayu |
お誕生日はいつです? |
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Sae |
10月18日どす~。 10月18日です。 |
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Sae |
あら~? あら……。 |
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Sae |
ふふっ。天秤座どすか? |
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Yukari |
そうですね。ふふふっ。 |
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Sae |
なんや、とたんに親近感湧いてきましたわ~。 ゆかりはん、紗枝さんなんて言わんと、 紗枝ちゃん、て呼んでくれはってええんどすえ~♪ |
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Yukari |
ふふっ。ありがとうございます。 紗枝ちゃん、よろしくお願いしますね。 |
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Mayu |
ふふ。 こうして、新しい繋がりが広がっていくのって、いいですよね。 |
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Sae |
せやなぁ。 |
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Mayu |
これからのレッスンやお仕事本番も、楽しみですね♪ |
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Yukari |
はい♪ |
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Chapter 2[edit]
優しさはいつもここに |
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演技のレッスンを終えた奏、まゆ、かな子。そこで、まゆは芝居が苦手だとこぼす。『自分らしくない自分』を見せなければならないことに抵抗を覚えていたのだ。それに対してかな子は、演技をおやつにたとえて、飽きがこなくていいと返す。説得力のあるその言葉と優しさで、一同は柔らかな空気に包まれるのだった。 |
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レッスンスタジオ |
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Kanade |
ふぅ……レッスン、お疲れさま。 演技のレッスンなんて、なんだか久しぶりに感じるわ。 歌や踊りばかりだったから。 |
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Kanako |
お疲れさまでした~。そうですね。 PVを撮るときとかは、ポーズをとったり表情を作ったりしますけど お芝居となると、また別ですもんね。 |
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Mayu |
はぁ……。 まゆ、お芝居って苦手なんですよね……。 |
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Kanade |
あら、そうなの? |
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Kanako |
全然そんな感じ、しなかったけど……。 |
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Mayu |
だって、自分らしくない自分をいっぱい見られちゃうから……。 |
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Kanako |
それは、どういう……? |
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Kanade |
あぁ、そういうこと? |
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Kanako |
わかるんですか、奏さん? |
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Kanade |
えぇ……。まぁね。 お芝居は、怒った顔や泣き顔、 ときには変な顔もしなきゃいけないでしょう? |
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Kanako |
そうですね。 |
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Kanade |
それを、見られるのが嫌なのよ。ね。 |
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Mayu |
そうですね……。 |
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Kanade |
でも、そればっかりはあきらめるしかないわね。 アイドルなんだもの。自分で仕事も役柄も選べない。 |
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Mayu |
今回は演じるお仕事で、役柄も可愛らしい女の子だったから よかったですけど、怖い役とか、嫌われ者の役が来たら……。 ……ちょっと考えちゃいますね。 |
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Kanako |
確かにそういうのばっかりだったら困っちゃうけど……。 たまには、そういうのもいいんじゃないかなぁ? |
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Mayu |
……どうして? |
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Kanako |
ほら、たとえばなんだけど。 おやつを食べるときに、チョコレートばっかりずっと食べてると、 飽きちゃうじゃない? |
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Kanade |
たとえば……ね。 |
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Kanako |
でも、チョコレートとポテトチップスがあったら、 交互に食べると味が変わって……。 飽きないじゃない? |
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Mayu |
は、はぁ。 |
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Kanako |
プロデューサーさんも、きっとそうだと思うから♪ |
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Mayu |
はぁ……。そう、なの、かしら……? |
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Kanade |
……謎の説得力があるわね。 |
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Kanako |
そんな感じで、いろんな味を出せるように、 明日からも頑張りましょう~♪ |
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Mayu |
はぁい。 |
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Kanade |
あぁ、ちなみに明日からは社内のスタジオじゃなくて、 外部スタジオでレッスンですって。 演出家さんとかと稽古するから、かしら。 |
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Kanako |
そうなんだ ! |
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Mayu |
へぇ……まゆ、新しいスタジオへ行くときって、 いっつも迷っちゃうんですよね。 無事行けるかしら……。 |
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Kanako |
わかる~。 |
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Kanade |
なら、明日は集合して行きましょうか。 時間と場所、あとで連絡するわね。 |
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Kanako |
……ありがとう~ ! |
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翌日…… |
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Kanade |
よくよく考えたら、まゆの制服って見たことなかったわね。 |
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Mayu |
そうですねぇ……。 今日は学校からそのまま来ちゃいましたから。 普段はなるべく着替えるようにしてるんです。 |
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Kanade |
かわいい服装でいたいから? フフッ、健気ねぇ……。 |
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Mayu |
うふふ。 あ、かな子ちゃんも来ましたね。かな子ちゃーん♪ |
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Kanako |
お待たせ~。 ふたりとも、けっこう待った~? |
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Mayu |
ううん、そんなことないですよ。 |
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Kanade |
じゃあ、行きましょうか。 |
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Kanako |
今日もよろしくね、まゆちゃん、奏さん ! |
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Mayu |
はぁい♪ |
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Kanade |
えぇ。 |
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Chapter 3[edit]
触れられそうな距離だから |
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レッスン後。帰り道を歩きながら、紗枝、ゆかり、かな子の3人は、今回の役について話していた。役を掴もうとしている紗枝とかな子に対し、ゆかりは役に必要な『愛』を知らないとこぼす。かな子と別れ、寮に着いてからも、紗枝とゆかりの話は続く。寮の風呂へ入り、昔話に花を咲かせるのだった。 |
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レッスン後 |
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Kanako |
ゆかりちゃん、今日のレッスンどうだった? |
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Yukari |
今日も、なかなか難しかったです。 少女を演じるというのは、 自分が少女のままではできないというか……。 |
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Sae |
せやなぁ。うちも、今回のお芝居は京言葉を使われへんし、 なかなか苦労してるわぁ。 |
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Kanako |
そうだよねぇ。 愛についてのお話っていうのも余計難しいところだし……。 |
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Yukari |
愛……ですか。 愛って、いったい何なのでしょうね。 |
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Sae |
んー。なんやろなぁ。 うちは愛を伝える役目らしいけど、これってのは言われへんしなぁ。 |
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Kanako |
奏さんかまゆちゃんだったら、なにかわかるのかなぁ。 私も、愛に包まれてる役目らしいけど……わからないもん。 |
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Yukari |
……それでいうと、私は幸せなのかもしれませんね。 |
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Kanako |
どうしてー? |
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Yukari |
私は、自分自身も、役柄も、愛というものを理解していませんから。 等身大の自分であたれば、いいのかなって。 |
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Sae |
あぁ~、そらそうやなぁ。 でも、そないな自分を幸せって思えるなんて、 ゆかりはんは優しい子やな。 |
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Yukari |
そうなのでしょうか……? |
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Sae |
知らへんことがあっても、それを認めて、前向きになってはりますやろ? 物事を真っ直ぐ見てるからこそ言える言葉やと、うちは思うなぁ。 |
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Yukari |
はぁ……そういわれると、そう、なんでしょうか? |
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Kanako |
ふふっ。ゆかりちゃん、ちょっと天然っぽいところあるもんね。 |
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Yukari |
え、私、天然ではありませんよ……? |
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Sae |
ふふ。それ、天然の子がよく言わはるやつやなぁ~。 |
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Yukari |
そうなのですか……? |
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街中 |
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Kanako |
あ、それじゃあ、私こっちだから。 ふたりは寮だよね。 |
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Yukari |
今日もお疲れさまでした、かな子さん。 また明日も、よろしくお願いします。 |
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Kanako |
うん、気をつけて帰ってね ! |
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Sae |
それはかな子はんの方やわぁ~。 |
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Kanako |
ふふっ ! じゃあ、また明日~。 |
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女子寮付近 |
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Yukari |
かな子さんは、愛に包まれているというのがぴったりですね。 |
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Sae |
……せやなぁ。 誰にでも話しかけて、お菓子もくれはるから、 餌付けまでされてもうて……。やさしさの塊やわぁ。 |
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Yukari |
そう思うと、今回の配役は、私たちの個性を思って 適役を当ててくださったのですね。 |
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Sae |
ほんまやなぁ。 せやけど、それでいうたらうちは愛を伝える役目らしいけど……。 どないな役目なんやろ……。 |
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Yukari |
誰かにもらった愛を、また誰かに伝える役目じゃないでしょうか。 詳しくは……私もわからないのですけれど。 |
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Sae |
うーん、誰かにもらった愛なぁ……。 お父はん、お母はん、京のひとら、あいどるの仲間……。 プロデューサーはん……それと、ふぁんのみんなからもろたかなぁ? |
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Yukari |
たくさんもらってきているのですね。 たとえば、どんな愛がありました? |
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Sae |
そら、話してたらえらい長なってまうわ~。 一晩中でも話せるくらい、おもろいえぴそーどがいっぱいどすえ。 |
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Yukari |
なら、今日はとことんお付き合いしますから……。 いろいろと、聞かせてください。 |
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Sae |
ええけど、うちにもゆかりはんのお話、聞かせてや~。 |
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Yukari |
えぇ。もちろんです。 |
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Sae |
ほんなら、まずはれっすんの汗を流すとしまひょか~。 |
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Yukari |
……へ? 汗を? |
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Sae |
まずは裸のつきあい、言いますやろ? ゆっくり心を和らげて、昔話でもしまひょ~。 |
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Chapter 4[edit]
私を溢れさせるあなた |
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撮影中、迫真の演技を見せた奏とかな子。その様子を見ていた紗枝はふたりを褒める。奏は役に感情移入し、いつもより熱が入ったという。そんな奏につられて、かな子も特訓の成果を出すことができていた。紗枝もまた、同じようにお仕事に挑んでいく。メンバーの新たな一面がお仕事の現場で花開いていた。 |
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洋館 |
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Kanade |
……愛なんて、信じても苦しいだけのものよ。 永遠の愛なんてないし、裏切られるのも愛ゆえ。 失ってしまった方が、楽になれる。 |
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Kanako |
そんなことないわ。奏さん。 私たち、まだ子どもだけど…… いつか大人になって、自分だけの愛を掴むことができるはず。 |
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Kanade |
愛に包まれているあなたなら、そうすればいいわ……。 |
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Kanako |
奏さん、どうしてそんな風になってしまったの? いつ、どうして失ったの……? |
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Kanade |
……私の願いなんて、単純なものだったのにね。 |
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Kanako |
……奏さん。 |
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演出家 |
はい、カーット ! いったん止めまーす。スタッフ集合~。 このシーンは、こっちの角度から押さえてるから……。 |
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Kanade |
ふぅ……。 |
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Sae |
ふたりとも、迫真の演技やったなぁ~。 うち、ほれぼれしながら見てたわぁ。 |
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Kanako |
そうでしたか? 私はセリフを追うのでいっぱいいっぱいでした~。 |
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Kanade |
私、かな子に問い詰められてるみたいでドキドキしたわよ。 |
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演出家 |
今のシーンなのだけど……あ、奏さん、ちょっといい~? |
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Kanade |
はい。 ……じゃあ、あとでね。 |
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Kanako |
あ、私はいいのかな……? |
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Kanade |
まずは私から、みたいね。じゃあ。 |
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Sae |
いってらっしゃい~。 |
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Kanako |
紗枝ちゃん、私の演技、どうでしたか? 少しでも気付いたことがあったら、教えてほしいんですけど……。 |
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Sae |
せやなぁ……奏はんに引っ張られてたように感じましたわぁ。 まるで別人みたいで……大人っぽかったしなぁ。 |
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Kanako |
なるほど……参考になります。 はぁ~。どうしても奏さんを前にすると、 大人っぽさに引っ張られちゃって。 |
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Sae |
かな子はんがぺーす崩されるなんて、珍しいわぁ。 なんやおもろいなぁ。ふふ。 |
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Kanako |
もう、こっちは真剣なんですよっ。 |
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Sae |
はいはい、怒った顔もかわいいどすえ~。 |
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Kanako |
もー……。 |
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Kanade |
かな子、演出家さんが呼んでるわ。 |
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Kanako |
ふぇ? あ、はい。おほん。いってきますね。 |
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Sae |
いってらっしゃい~。 |
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Kanade |
紗枝、かな子をいじって遊んでたの? |
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Sae |
そないなことあらしまへんよ~。 愛を伝える人らしく、愛を伝えとったんどす。 それより奏はん、あいかわらず演技がお上手やねえ。 |
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Kanade |
京都人にほめられると、あとが怖いって周子から学んだわよ。 |
|
Sae |
あらっ、そないなこと……。 さすがお狐こんこんしゅーこはん、油断ならんなぁ……。 |
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Kanade |
それはこっちのセリフ。 で、実際どうだった? 私の演技。 |
|
Sae |
かな子はんと話してたんどす。お上手やねーって。 |
|
Kanade |
そう? まぁ、歌も踊りもできるけど、演技も同じくらい ってのが売りだから、多少はね。 |
|
Sae |
かな子はんがぺーす崩されて、引っ張られてはったくらいどす~。 |
|
Kanade |
あら、それは逆よ。私のペースがおかしかったんだと思うわ。 プレッシャーに負けないように強くでちゃったから。 少女っていうより、むしろ地がでちゃったくらい。 |
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Sae |
ほー? そないなしーん、あったかなぁ~? |
|
Kanade |
思い起こさなくていいって。もっと素直に演技しなくちゃね。 場の空気に引っ張られるなんて、まだまだの証拠。 |
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Sae |
ふふ。かな子はんも奏はんも、 お稽古とは思えへんくらい本気で、素敵やなぁ。 うちも、出番が来たら気張らんと~。 |
|
Kanako |
紗枝ちゃん。 演出家さんが、次のカットに入る前に話したいって~。 |
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Sae |
あらあらあら、ほな行ってきます~。 ふたりとも、うちの居らんとこで噂話は、いけまへんよ~。 演技中、くしゃみが出てまうから~。 |
|
Kanade |
いいから行ってらっしゃい。 |
|
Sae |
は~い。 |
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Kanako |
なんだか、お芝居って楽しいですね。 演出家さんにはいっぱいだめ出しされちゃいますけど、 普段の自分とは違う面が出せて。 |
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Kanade |
……そうね。 でも私、かな子がそんなに演技派だなんて思わなかったわ。 相当特訓したんじゃない? |
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Kanako |
えへへ~。ちょっとだけ~。 |
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Kanade |
これだから、みんなと一緒のお仕事って気が抜けないのよね。 意外な人が、意外な働きを見せたりして。 ……さて、紗枝の演技はどうかしら? |
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Kanako |
楽しみですね~。 きっと、素敵な演技を見せてくれるはず ! |
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Kanade |
じゃあ、見せてもらいましょうか。 京娘の底力を……ね。 |
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Chapter 5[edit]
心震える想いで |
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---|---|---|
撮影も遂にラストカット。ゆかりとまゆが台詞を言い終えると、オールアップの声が響いた。立派に演じ切ったゆかりを、まゆと奏は労う。ゆかりは仲間やスタッフ、Pとの関わりの中で成長できたと、感謝を伝えた。ゆかりにとっては、今回のお仕事の全てがとても愛しい思い出となったのだった。 |
' | |
ドラマ撮影中 |
| |
演出家 |
それじゃ次、ラストカット ! |
|
Yukari |
だから……私は、愛を探し続けようと思います。 |
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Mayu |
私も、信じ続けます。愛を。 |
|
Yukari |
いつか、私たちが少女じゃなくなるときが来ても……。 |
|
Mayu |
少女だったころの気持ちを忘れないために……。 |
|
Yukari |
ふふっ。 |
|
Mayu |
……。 |
|
演出家 |
はーい、オッケー ! |
|
スタッフA |
お疲れ様でした ! |
|
スタッフB |
オールアップでーす ! |
|
(Select an option) | ||
お疲れさま |
| |
Yukari |
ありがとうございます。 ありがとうございます。 |
|
Yukari |
……ふう。 やはり、緊張しました……。どれだけのシーンを重ねても、 息が止まってしまうような緊張感は、なくなりませんね。 |
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Mayu |
え……緊張してたんですか? |
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Kanade |
見ていたけど、緊張なんて全然伝わってこなかったわよ。 |
|
Yukari |
あら、奏さん……そうでしたか? けっこう、震えていたと思ったんですけど……。 |
|
Kanade |
全然だったよ。 きっと、お芝居に熱中して忘れられたんじゃないかしら? |
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Yukari |
そうでしたら、嬉しいです。 私は、みなさんほど 場に慣れているわけじゃありませんでしたから……。 |
|
Mayu |
今回、立派に主役を務めて、自信がついたんじゃないですか? |
|
Yukari |
そんな、まだまだです……。 撮影は終わったとは言え、お仕事が終わったわけじゃありませんし。 |
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Kanade |
そうね。このあとスタッフさん達が編集して、 美しく仕上げてくれるでしょう。 撮り直しがないといいわね。 |
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Mayu |
素敵に仕上げていただけますよ。きっと。 |
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Yukari |
いまはまだ夢の中にいるみたいです。 始まったのもいつの間にかなら、終わるのもいつの間にかですね。 こういうものは……。 |
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Kanade |
目覚めたら、全ては夢の中の出来事だったりして? |
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Mayu |
それは困りますね。 せっかくみなさんと素敵な思い出がつくれたのに……。 |
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Yukari |
……そうですね。 役の上では愛を知らない少女でしたけど、 実際の私もそうだったように思います。 |
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Yukari |
まゆさんや奏さんからは、自分に自信を持って、 信じるものへ進む力をもらいました。 |
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Kanade |
……そんなたいしたこと、したかしら? |
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Mayu |
ゆかりさんがそう受け取ったってことですから、 そうなんじゃないですか? ふふっ。 |
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Yukari |
かな子さんはまさに包み込むような優しさでしたし、 紗枝ちゃんとはこの期間中とても仲良くしていただきました。 |
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Yukari |
すべて、作品と同じくらい愛しい思い出です。 |
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Kanade |
……ふふ。よかったわ。 終わりよければ全てよし、というものかしら。 |
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Mayu |
でも、まだ終わりませんよ。 みんなで完成品を見るまではね。 |
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Yukari |
そうですね。 それでも、言わせてください。ありがとうございました。 スタッフの皆さんも、共演者の皆さんも、プロデューサーさんも。 |
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(Select an option) | ||
お疲れさまでした |
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Yukari |
……はいっ。 |
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Ending[edit]
My Heart Choose This Way. |
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事務所でPを待つ5人。撮影したドラマの完成品を、Pが持ってくる予定になっていた。しかし、時間がたつにつれ、何かと理由をつけて、席を立っていくメンバーたち。気づけば、ゆかりと紗枝だけになっていた。それには、ある理由があって……。 |
' | |
事務所 |
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Sae |
いやぁ、ようやっと完成したんやて? 楽しみやなぁ……。 |
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Mayu |
プロデューサーさん、まだかしら……。 プロデューサーさんが完パケを持ってきてくれるんですよね? |
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Kanade |
そうらしいわね。 ……だけど、よりによってみんなで観なくてもいいんじゃない? |
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Kanako |
たしかにそうですね。 なんだかちょっと、照れちゃいます……。 |
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Mayu |
……そっか。演じてる自分を観ることになるんですよね。 ちょっと、ドキドキ……。 |
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Sae |
せやなぁ……。言われてみたら、そうなりますなぁ……。 |
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Yukari |
あら? みなさん、楽しみだったのでは……? |
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Kanade |
完成は楽しみだけど……そうね、例えるなら、 映画は独りで観たい、みたいなものかしら? |
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Yukari |
私、お友だちと観ますけれど……? |
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Kanade |
あぁ……そういう人も、いるわね。 |
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Kanako |
ほら、恥ずかしいセリフが多かったじゃないですか、今回。 愛についてのお話でしたし……。 |
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Sae |
『あいくるしい』をれこーでぃんぐしたとき、 同し気持ちになりまへんでした? |
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Yukari |
へ? |
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Mayu |
恋や愛の歌を歌っているときは気にしなくても、 いざ冷静に歌詞を読んだら恥ずかしくなっちゃう、みたいな……。 |
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Kanade |
……みんなの前では観たり聞いたりしていられないわよね。 そういうの。 |
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Yukari |
いいじゃないですか、みんなで楽しく完成品を観ましょう。 あ、ポップコーンにコーラがあったらもっと楽しいでしょうか……? |
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Kanade |
……そ、そうね。 私は上映中にはモノを食べない主義だけど……。 |
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Yukari |
あら、じゃあお飲み物だけで……。 ほかの皆さんは? |
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Kanako |
あ、私キャラメルポップコーンがいいです~♪ |
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Mayu |
かな子ちゃん、撮影中はけっこう食事に気を遣ってましたもんね。 |
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Kanako |
そうなの~。 でも、もう完成したし、みんなとの打ち上げだったら良いかなって♪ |
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Yukari |
いいに決まってますよ♪ だってほら、お祝いなんですから。 みんなで完成を喜び合う会ってことで、ね。 |
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Sae |
ゆかりはん、なんやだいぶきゃらが明るくなりはったなぁ~。 |
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Yukari |
そうでしょうか……? |
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Kanade |
うん。 ……わかったわ。ちょっと買い出しにでも行ってくる。 |
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Kanako |
いいですね ! 私も一緒に行きますよ~ ! |
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Kanade |
……っ。 |
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Sae |
あら……。 |
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Kanako |
……? |
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Kanade |
だ、大丈夫よ。ひとりで行けるから。 ありがとう。大丈夫。ほんとよ。 |
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Kanako |
……そうですか~? じゃあ、お願いしますねっ。ありがとうございます♪ |
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Kanade |
……じゃあ、みんな、そういうことで。あとよろしくね。 |
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Yukari |
どういうことですか……? |
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数十分後 |
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Mayu |
プロデューサーさん、まだかしら……。 |
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Kanako |
遅いですねぇ……。そういえば、奏さんも遅くないですか? |
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Sae |
あ……奏はんなら、ちょーっと遠くのお店にいったんと違いますやろか? |
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Yukari |
会社の近くにも、お店はたくさんありますけど……。 |
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Sae |
お散歩したい気分になったんと、違うかなぁ……? |
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Mayu |
まぁ、そういうときもありますよね。 |
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Yukari |
早く戻って来ないと、プロデューサーさん来ちゃいますよね。 せっかくみんなで観られる機会なのに……。 |
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Mayu |
……プロデューサーさんも、演じてるまゆたちを 観ることになるんですよね。 それを、まゆたちも見ることになりますよね……? |
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Yukari |
そういうことになりますね。 それが、なにか……? |
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Mayu |
あっ、いいえ。全然、なにも問題なんて。 ……でも、プロデューサーさんが遅いのも気になるし、 まゆ、探しに行ってきますね。 |
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Kanako |
いいですね ! 私も一緒に行きますよ~ ! |
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Sae |
……。 |
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Mayu |
あ、ありがとう。でも大丈夫ですよ。 まゆ、ひとりで行ってきますから。ね。 |
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Kanako |
そうですか~。じゃあ、待ってますね ! みんなで ! |
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Mayu |
はい~。じゃあみなさん、そういうことで……。 |
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数十分後 |
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Kanako |
奏さんもまゆちゃんも遅いですね~。 プロデューサーさんも遅いですけど……。 |
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Sae |
ほんまやなぁ。ほら、渋滞にでも捕まってるんと違うかなぁ? うちも様子見てこよかなぁ? |
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Yukari |
あら、紗枝ちゃんも……? そんな、だんだんみんな居なくなっちゃうみたいで寂しいですね。 |
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Sae |
……い、いやぁ、そんなことあらしまへんよ。 うちはいつでもゆかりはんの隣ですやろ? ほら、今も。 |
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Yukari |
そうですよね。ならよかったです……。 |
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Kanako |
あっ、じゃあ、私がプロデューサーさんを迎えに行ってきますね ! 出て行ったふたりにも連絡してみます ! |
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Sae |
あっ……そ、そうどすか? そうやね……それも、まぁ、一つの方法としては、ありやね……。 |
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Kanako |
じゃあ、行ってきま~す ! |
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数十分後 |
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(Select an option) | ||
お待たせ |
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Sae |
あら、プロデューサーはん。 あ、案外早かったどすな~。 |
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Yukari |
案外、遅かったの間違いでは……? |
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(Select an option) | ||
ふたりだけ? |
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Yukari |
そうなんです。 それで……その手にお持ちなのが、完パケ、ですか? |
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(Select an option) | ||
観ようか |
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Yukari |
はい ! |
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Sae |
あぁ、ゆかりはん、みんなを待った方が~。 |
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Yukari |
紗枝ちゃん、みんなが来たらもう一回観ましょう ! プロデューサーさん、お願いします ! |
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(Select an option) | ||
OK |
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アイドル達が、演技している…… |
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(Select an option) | ||
かわいい |
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アイドル達が、演技している…… |
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(Select an option) | ||
かわいい |
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アイドル達が、演技している…… |
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(Select an option) | ||
かわいい |
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Sae |
……。 |
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Yukari |
……。 |
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(Select an option) | ||
どうした? |
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Yukari |
観ている間、プロデューサーさんが、 あまりにかわいいとおっしゃるので、その……。 恥ずかしく、なってしまいました……。 |
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(Select an option) | ||
かわいかったよ |
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Yukari |
……ありがとう、ございます。 |
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Sae |
……こうなるう思て、みんな逃げはったんやて~。 はぁ~。あー、恥ずかし……。 |
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Yukari |
そうだったんですか……。 でも、とても良い経験をさせていただいたと思います。 とても、とても……恥ずかしかったですけど……。 |
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